ブランドって何だぁ？

さて今回は、既存顧客を強く意識したプロモーションをご紹介しましょう。

対象ブランドは車のＭＩＮＩ。メイン・ターゲットは既納客。そしてプロモーション媒体はＤＭを核として、雑誌広告およびキャンペーン・サイトを連動させています。

このプロモーションの狙いは、ＭＩＮＩオーナーがメーカーから特別扱いされているんだという意識を醸成させるとともに、そのオーナー同士のコミュニティー形成を促進させるというもの。つまりブランド擁護者のテコ入れですね。

ではプロモーションの仕組みをオーナーの視点から解説していきましょう。

ＤＭが届く。
ある日、小さな小包が届く（登録データがある全てのＭＩＮＩオーナーに送付された模様）。中を開けてみると、ちょっと古びた感じのハードカバーの本が一冊入っている。タイトルは "A Dizzying Look at the Awesomeness of Small"＝「小さいことの素晴らしさへのめまいがする見方」（かなり意訳）。

本のページ数やその内容についての情報は入手できなかったのですが、最後のページ（表３）は隠し箱になっており、学研の付録についてくるようなおもちゃが３点入っています。

どれもが雑誌広告に使うためのものなのですが、そのうちの１つには"Magic Window Decryptor"＝「魔法の暗号解読窓」（これまた意訳）と書いてあります。

広告に当ててみる。
おそらく本の中で、いつ売りのどの雑誌、と謳っているのでしょう。このＤＭを受け取ったオーナーは早速雑誌を買いに走り、そしてワクワクしながら魔法の暗号解読窓を使うのです。いや、きっとそうしているでしょう。。。そして、下記のようにやってみるのでした。（雑誌タイアップですよね）

ご覧のとおり、雑誌広告には"ATTENTION MINI OWNERS"＝「ＭＩＮＩオーナー様へ」と大きく書かれている。

ウェブサイトへ行ってみる。
魔法の暗号解読窓によって、今度はウェブサイトへと導かれます。なぜなのか理由はまったく見当もつきませんが、"Citizens for Fair Insect Treatment"＝「昆虫を公平に扱う市民」というウェブサイトなんですね。

いくつかクリックできるところはあるのですが、右コラムの中ほどにＭＩＮＩの写真のあるコンテンツを除いては全てダミー。しかもＭＩＮＩのコンテンツからポップアップされるのはＩＤ番号入力欄のみ（これがＤＭに入っているものなのか、オーナーが納車時に与えられたものなのかは不明）。ここで、ようやっと今回のプロモーションを告知するサイトにたどり着きます。

サイトの名前は"MINI takes the States"＝「ＭＩＮＩが州を横断」（意訳）。内容は、１９の州、４，０００マイルを、８月２１日から９月４日までの間にＭＩＮＩオーナーが横断するといった告知で、全部あるいは１区間でも参加しないかという呼びかけになっています。また、各中継ポイントや区間での飲食や宿泊、またはイベントなどの案内もされており、なおかつ既に参加表明をしているアメリカ全土のオーナーをチェックすることもできます。今日現在で３，３４７オーナーが参加登録していました。

このイベントが終了後、結果が入手できればまたレポートします。このような壮大なプロモーションはスポンサーに通すのが非常に大変な上、通ってしまってからが実は冷や汗もんなんですよね。予知できないハプニングや事故が相当予想されるからです。

所感
でもちょっと残念なのが、全体として展開方法が古いということ。Ｗｅｂ２．０の時代なのだからもっとブログによるチェーン・リアクションというかバイラルの仕組みをつくるべきなのでは（特にＭＩＮＩのような車であればかなりのオタク的ファンがいると思われる）。そうすれば開催期間中も相当なノイズ（ブロガーによる自発的な速報）も期待できるし。また、例えばGoogle Mapなんかとのマッシュアップもできているとよいのに。

とはいえ、「そんなことは考えたし、提案もしたが分かってもらえなかった」あるいは「予算/時間が足りなかった」なんて声が担当代理店から聞こえてきそうですね。よくあることですし、そうであるならば、痛いほど分かりますわい。

出所：Everything's Better With Brentter